Share this page

【対談】WATT × TAKASE
「"できるけどこれまでやってなかったこと"をお互いに引き出し合えた」

2024年5月、関東と関西をそれぞれ拠点とするラッパー、WATT a.k.a. ヨッテルブッテルとHI-KING TAKASEが手を組み一枚のアルバムをリリースした。同世代でもあり、互いにグループでの活動も経てきた両者はどのように邂逅し、今回のコラボに至ったのか。本企画ではコラボアルバム「ぼちぼちいこか」をリリースしてから間もなく、第三者を介さずに、より普段に近いリラックスした環境の中で対談をおこなった。リスナーから事前に寄せられた質問を取り入れながら、二人の出会いから今作に至るまでの経緯、また制作の裏側や互いの思いなどを深堀りしている。

WATT:とりあえずアルバム制作お疲れ様でした。

TAKASE:お疲れ様でした。

WATT:さっそくだけど、事前に募集した質問の中から時系列的に良さげなものをピックアップしていきますか?

TAKASE:うんうん。

出会い〜コラボに至った経緯

二人の出会いを教えてください

WATT:これはどっかでも話したけど、2004〜2005年?そこらへんアバウトなんだけど、恵比寿のMILKでやってたFASTっていうイベントに上野さん(サイプレス上野)にくっついて行ってて、そこで上野さんに紹介してもらったんだよね。TAKASEが上野さんとフリースタイルしてて「今日は奈良から車運転/人生に何度か来るマウンテン」みたいなラップしてて「やば」みたいな。深い時間だったし酒も入ってたから「ガチフリースタイルじゃん」と思って(笑)。

TAKASE:よう覚えてんな、そんな2004年とかの(笑)。

WATT:それはすごい覚えてる。でもそこで初めて会って挨拶はしたけど、それだけって感じだったんだよね。

TAKASE:そっけなかったやろたぶん?コミュ力低い時代やったから、そん時。

WATT:たぶん「ウィッス」くらいな感じだったね。でも元々HI-KING(=初期はTAKASEとDJ HIDEHITOでHI-KINGとして活動)のことは知ってたんだよね。

TAKASE:それはなんで知ってたん?

WATT:達磨様(だるまさん=元韻踏合組合のOHYA)のアルバムとか「関西ラップル2005」(=関西のアンダーグラウンドなアーティストを収録したコンピレーションCD)とか、あと雑誌に名前載ってたりして知ってたんだよね、たしか。

TAKASE:「関西ラップル」懐かしい。あれオレの初音源やからなあ。「CLUB活動」っていう曲。

WATT:へー、知らなかった。

TAKASE:デモとかは作ってたりしてたけど、ちゃんとプレスして流通に乗せてっていうのは初めてやったな。ちゃんとしたレコーディングもほとんどしたことなかったからな。

WATT:そうだったんだ。じゃあそんな出会いからの流れでこんな質問が来てるんだけど。

 

仲良くなったきっかけがあれば教えてください

TAKASE:なんで仲良くなったんか、もうようわからへんねんけど。何回かLIVE呼んでくれてたやん?WATTのイベントに。

WATT:一回呼んだね。っていうのも、実は2007年くらいに昭和58〜59年生まれの同世代を集めて一緒に曲を作ろうってなって、結局は頓挫した曲があったんだよね。韻部(=長野で結成されたWATTとkamuriの2MCグループ)の作品に入れたいっていう感じで。その時に決まってたメンツがkamuriとTAKASEとABNORMAL BULUM@のジョイくん(アンジキジョイ)、Coe-La-Canthの悠然(a.k.a. 赤いメガネ)と吉田のBOOBEEと、あとPUNPEE。まだ伝えてなかったけど、たしかドルネコマンション(=現・弗猫建物)にも声掛ける予定だったはず。それで、関西勢のレコーディングを関東でしてもらうためにイベントを企画して、HI-KINGとABNORMAL BULUM@と501(=悠然 a.k.a. 赤いメガネ、吉田のBOOBEE、DJ SCRATCH NICEによるユニット)を呼んだっていう流れだったんだよね。

当時のフライヤー

TAKASE:あー、それ呼んでくれたなー。その曲もデータあんねやったらもう1回聞きたいねんけど。

WATT:データあるよ(笑)。ビートもけっこう気に入ってたんだけど、実際ラップ録ったのってTAKASEとPUNPEEとkamuriとジョイくんだもんね。mixiの日記見返したらRECの前日にビート渡してるわ。やべぇヤツだなオレ(笑)。しかもちゃんと翌日にジョイくんとTAKASEは書き上げてきてくれてるっていう。結局オレも悠然もブービーも録れてないし。完成させられなくて申し訳ないって感じです…。

TAKASE:でもそのイベントめっちゃ覚えてるわ。東京行くこともあんまないし、気合も入れるつもりやってんけどその当時「気合い=酒飲む」みたいな感じやったから、出番前に酒飲みすぎて人生で初めて全曲歌詞飛ばしたからな。

WATT:マジで?

TAKASE:さすがにこれは飛ばさへんやろみたいな曲も、全曲きっちり飛ばして。もうLIVE終わってからめっちゃヘコんでて、WATTに「せっかく呼んでくれたのにあんな感じでごめんな」って言ったら、WATTは「いやめっちゃよかったよ」みたいな。え?聞いてへんか、めっちゃ優しいかどっちよ?みたいな(笑)。

WATT:全然覚えてないわ。前者かも(笑)。でもその時ってゲストとして呼びはしたけど、そこでTAKASEとの距離が縮まった印象はオレ的にはなくて。

TAKASE:そうやな。知ってるラッパー同士っていうぐらいの距離感やったな、まだ。

HI-KING LIVE 渋谷NO STYLEにて(2007年11月22日)

WATT:それから2010年に、Amp-refive(アンプリファイブ)のSEAMANくんに大阪のTRIANGLEに呼んでもらったんだよね。そこでTAKASEとも一緒になったんだよね。オレのあとにTAKASEがLIVE控えてて、その時に「LIVEめっちゃよかったで」みたいに言ってもらって。

TAKASE:うんうん。

WATT:そこでなんかようやく「認めてもらえた」みたいな。

TAKASE:いやいやいや、前から認めてるやん。世には出てないけど一緒に曲やってんねんから。

WATT:でもなんかね、まだ壁があったんだよオレの中では。けど、その時は本音で言ってくれてる感じがしたのをすげえ覚えてるんだよね。

TAKASE:もうオレ、びっくりするぐらい記憶がないねんけど(笑)。またベロベロやったんやろなどうせ。

WATT:まあでも、LIVEをちゃんと見てもらった上で認めてもらったみたいな記憶はすげえあって。

当時のフライヤー

TAKASE:大事やな、やっぱ伝えるのも。たぶん伝えてへんかっただけやと思うねんけどさ。タイムラグ少なくコミュニケーション取るのって今よりも難しい時代やったと思うねん。もう直で会うしかないみたいな。

WATT:たしかに。でも、そのあたりからちょっと対等に話せるかも、みたいになったかな。

TAKASE:いや、前から対等やろ(笑)。

WATT:そこから2013年に出したオレのソロファーストアルバム「Shikou品」に入ってる「無賃乗者」っていう曲のREMIXを作ろうかなってなった時に、真っ先に浮かんだのがTAKASEとMETEORさんだったんだよね。それが2014年でしょ?その時はもうお互い壁はなかったはずだから、たぶん10年かけて仲良くなったんじゃない(笑)。

無賃乗者REMIX LIVE初披露時・三宿WEBにて(2014年)
左からTAKASE、WATT、METEOR、
最善(※最善は楽曲にも実は参加。ジャケットにも映っている)

TAKASE:ほんで今年がそっからまた10年後ってことやろ?仲良うなり方が陰キャやな(笑)。コミュ力の低さっていうか、2人とも陰キャやから。

WATT:全然仲良くならなかったな(笑)。

TAKASE:けど同世代なんかは特に、まず自分がかましてから、認めてもらってから一緒にやりたいっていう感覚はあったよな。

WATT:「やろう」って言って、すぐにコラボできるような感じではなかったよね。

TAKASE:で、そっから「NEW タカセ」(=2017年にリリースされたTAKASEのセカンドアルバム)に「待ちわびた風」と「COOK」でビート提供してもらって…


WATT:そのあとオレのサードアルバム「めぐるうた」(2021年)に「TSUMAMI feat. HI-KING TAKASE & GAPPER」で参加してもらったんだよね。そんな流れで今回のアルバムに至る、と。そういえば「TSUMAMI」を作る前に、実は「鍋FIESTA」が出来てたんじゃなかったっけ?

TAKASE:せやせや。

WATT:元々それもオレのソロ名義で出そうと思って作ってたんだけど、寝かしてたっつうか、出すタイミングもなく。

TAKASE:ずっと弱火でコトコト煮てるみたいな(笑)。

WATT:そうだったね。「鍋FIESTA」もあって「TSUMAMI」も作ったことだし「もう二人でどんどん作ろうや」みたいな感じになって、アルバムに向かっていったんだよね。

TAKASE:そうそう。たまに曲を作りたくてしゃーないというか一気に加速する時があって、オレはビートも作られへんしラップするしかないから、ビートメーカーとのペースとかタイミングがバチって重なったらもっと上手くできるのにな、というか「いつでもイケんで」みたいなマインドがずっとあったから、そういう風通しのいい制作をオレはすごいやりたかったんよ。もちろんその時やりたい奴とか音の好みもあるけど。

WATT:この年になると同世代のプレイヤーがどんどん少なくなってくるじゃん?その中でもフラットにノリで作れるじゃないけど、そういう人ってあんまりいなくて。そういう時にTAKASEが「一緒にやりたい」って言ってくれたからタイミング的にも良かったのかもしれない。作ってみてソロと違いはあった?

TAKASE:あるどころか、オレはもう楽すぎてヤバい。単純に作業が普段の半分以下やから。オレがサビやってへん曲に関してはヴァース埋めてるだけやし。WATTの負担はデカいかもしれんけど、オレはもう楽すぎて。

WATT:オレがソロ用に作ってて「あ、これソロじゃないな」みたいになった曲を聞かせて「それええやん、やろや」みたいなノリも何曲かあったよね。

TAKASE:そもそも「ソロじゃない」っていう感覚が、オレの中でよくわからへんねんけど。だって自分のビートなわけやろ?

WATT:例えば「結構です」とかさ。これソロアルバムに入れる曲じゃないなー、みたいな感じで外してたのよ。

TAKASE:そういうことね。まあ、ちょっとWATTにしてはハード目なテーマ、というか雰囲気の曲やもんな。

WATT:そう。で、宙ぶらりんの状態でTAKASEに聞かせたら、それも速攻返ってきたんだよね。

TAKASE:そうやな。オレはもう早さでしか役に立たれへんなっていうのがすごいあったから、速さをすごい意識したな。やり直した曲とかももちろんあるけど。まずは速さ、次にクオリティ。あかんかったらコマゲンするっていう。

WATT:でも、それが今回一緒に作ってみて新しく自分の中にインプットできたことで。オレは結構、準備してちゃんと決めてやりがちだから。

TAKASE:オレは逆にそれがすごいなと思って。WATTはガワを先に決めるやんか。ガワを固めてから書き始めたらブレることも少ないし、結局その方が早い時もあるなと思ってて。「こういう構成で」とか「LIVEで歌ったらこういう雰囲気になるような曲」とか「アルバムの流れでいうと、この辺の位置の曲」とか。そういうやり方もあんねんなみたいな、すごい勉強になった。

WATT:オレは逆なんだよね。結局ガワを言ってみたところで、やってみなきゃわかんないじゃん?っていうのがTAKASEのスタイルだったから(笑)。なんていうか、オレはスタート地点から望遠鏡で遠くを見て「行けるか行けないか」みたいな感じだけど、TAKASEは迷わずどんどん歩いて行って、違ったら別の道を行くみたいな。結局動いてるのはTAKASEで、そっちの方がいいなというか、そういうこともできるようになった方がいいなっていうのは、今回は一緒に作ってみて学んだところだね。

TAKASE:たしかに、今回のアルバムの中にもWATTには珍しくフリースタイル的な書き方してる曲もあったな。

WATT:その場で仕上げた曲もあるもんね。たしか「お好きにどうぞ」とかそうだよね?

TAKASE:だから、もちろんカチッと決めるやり方でも良い曲もあるし、ラフに行って渋いやつもあるし、そん時そん時でそれ自体もやってみんとわからんっていうか、やってから決めるぐらいのやり方が1番ちょうどええんちゃうかなと思って。

WATT:ソロ作るのにめっちゃ時間がかかる理由がそれで。考え過ぎちゃって結局進まないみたいなことがずっとなんだけど。それを今回、良い方に導いてもらえたなっていうのがあって。ケツを叩くとは違うんだけど。

TAKASE:いやケツは全然叩いてるつもりないで。それぞれのペースがやっぱあるし、それよりWATTの比重がでかいのももちろんわかるし。それ以外の作業とかもある事もわかってるから、オレはほんまにヘラヘラしてラップのヴァース埋めてるだけやなって(笑)。WATTに対しての申し訳なさで速く書くっていうのはもちろんあったけど、それだけじゃなくて、速さとクオリティのバランスの1番みたいな人になれたらめっちゃおもろいやろなと。

WATT:速く仕上げることに重きを置いてるよねTAKASEは。

TAKASE:置いてる置いてる(笑)。めちゃくちゃ置いてる。

WATT:そこがエキサイティングで楽しいって言ってたよね。たしか「お好きにどうぞ」もその場で書いて録って、プリプロなんだと思ってたけど結局そのテイクを採用したもんね?サビも。

TAKASE:そうそうそう。

WATT:オレもなんとかTAKASEが帰るまでには書き上げたけど、後日録り直したし。だからレコーディングスキルもTAKASEはすげえなって思うんだよね。オレは結構フロウとかも録りながら修正したりするんだけど。TAKASEはそれもなくて、もう書いた時点で全部頭の中で出来てるみたいな。

TAKASE:それはそうやな。もうそれは一筆書きやから。絵っていうか字みたいな感じやから、もうそこ変えたら自分の中で違和感あるから。さらさらさらって書いたやつが1番しっくりくるねん。

WATT:でもラップのキーとかも1テイク目で完成されてるわけじゃん?すごいと思いますよ。

TAKASE:でもそのキーとかで言ったら、WATTは歌ったりハモったりするやんか。あれとかどうやってんの?オレ音楽的な知識がないから、あってもたぶんできひんねんけど。どうやってできるようになったん?

WATT:なんだろうね?でも小っちゃい時にピアノやってたよ。

TAKASE:え、その初出し情報なんなん?やばいやん。

WATT:初出しでもないかもしれないけど、でも途中で挫折したから今は何も弾けないよ。

TAKASE:でもその鍵盤やってたっていうのは絶対関係あるよな。

WATT:それはあるかもしれないね。でも音楽はずっと昔から好きだったと思う。そういえば、小学校の友達に久しぶりに会った時に言われたんだけど、学校帰りに家に呼んで”オレが作曲したとされる曲”をピアノで聴かせてたらしい(笑)。たぶんいわゆるちゃんとした曲じゃなくて単音でポロポロ弾いて、メロディーだけを聞かせる感じだと思うんだけど。

TAKASE:めっちゃヤバいやん。小学生やろ(笑)?そんなやつおらんかったけど。

WATT:そういえば音楽のルーツに関連する質問がなんかあったよね?

次のページへ >

Copyright© WATT a.k.a. ヨッテルブッテル , 2024 All Rights Reserved.