【対談】WATT & TAKASE(2024.7.6)

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音楽のルーツ

以前購入したWATTさんの「HELLO,DOLLY!」(MIX CD)がとても好きだったので、音楽のルーツに興味があります

TAKASE:それってどういうMIX CD?

WATT:Swing Jazzとか昭和の歌謡曲とか、あとはSOULとかロックンロール、Brazilとか色々ごちゃまぜ。自分が生まれる前の曲ばっかり入ってるんだけど、なんというか心が踊る、楽しい感じかな?

TAKASE:へぇー。

WATT:オレたぶん昔好きだった曲って基本的に今も好きだから。こういうコード進行が好きとかメロディーが好きっていうのは、あんまり変わってないかもしれない。好きなジャンルとか増えることはあっても。オレ初めて買ったCDはサザンの「太陽は罪な奴」なんだよね。

TAKASE:あれが初めてなんや。遅いんちゃう?

WATT:でもその曲も、いまだにDJで掛けたりするしさ。Jurassic 5の「Swing Set」から「太陽は罪な奴」に繋いだりみたいな。だからたぶん変わってないんだよね、好きな感じは。

TAKASE:すごいな。

WATT:逆にTAKASEの音楽ルーツというか、どんな感じ?

TAKASE:オレは初めて買ったCDはWANDSの「時の扉」っていう曲やねんけど。その当時は曲が好きでとか、こういうジャンルが好きでとかもワケわかってへんからCD屋に行ってとりあえずトップ10みたいな並んでる中からなんとなく買って、みたいな感じやったな。

WATT:そういう感じだったんだ。じゃあ、続いてアルバムに関連する質問。

アルバム「ぼちぼちいこか」について・制作秘話

「ぼちぼちいこか」で最も気に入っているライムを教えて!僕は「Musicと飲食/身の丈のHip Hop」のとこです

WATT:アルバム全体じゃなくて曲の「ぼちぼちいこか」のこと言ってんのかな?

TAKASE:どうなんやろ?まあどっちもやな。

WATT:曲でいうなら「まぁなんやかんや言うてますがオレらまだまだ/やりたいこと見たいもの多々ライカ山」だね。

TAKASE:うんうん。WATTのヴァースな。

WATT:なんか単純に「多々ライカ山」ってワードがウケんなぁと思って(笑)。

TAKASE:「山の如し」な。

WATT:オレのソロでは使わなさそうだもんなこのライン。でも一緒に作ってると、まず最初に聞かせるのがTAKASEだから「TAKASEがどういうリアクションするかな?」みたいなところで思い切りの良さというか「ウケるからこれでいいか」みたいな基準が一個あった気もする。

TAKASE:それでいうと「トマレナイ」の「Tic-tac もう未練ない/ほら過去より未&来」の「未&来」の部分。WATTが仮で歌詞ハメてただけやねんけど「いや、もうそれでええやん」って。

WATT:あー、あとで絶対変えるつもりだったもん。「未&来(=ミ・エン・ライ)」って(笑)。TAKASEが「これでええやん」って押し切ったもんね。

TAKASE:なんていうか、オレは生まれたフレーズが適当であれば適当であるほど採用って感じやねん。例えば普通にテーマに沿って歌詞を書いていったら、当たり前やねんけど9割ぐらいは絶対そのテーマについての言葉というか歌詞になるやんか。けどそうじゃなくて「これいけんのかな?」みたいな言葉が不意に生まれてくる時あるやんか?それはもうその時点でオレの中では採用やねん。別にふざけてるわけでもないねんけど。面白っていうかユニークさみたいな、そういうのはちょっと残しときたいし。特に二人でやるんやったら伝わっても伝わらんくても別にええやんみたいな(笑)。

WATT:それを聞いて今思ったことがあるわ。言い方悪いかもしれないけど今回のアルバムって、オレのデータのゴミ箱の中からTAKASEが「これまだ使えるやん」みたいな感じで拾い上げてきたものを磨き直して出来上がっていった気がする(笑)。

TAKASE:たしかに。

WATT:ゴミ箱って言い方はちょっと語弊があるかもしれないけど。ビートも含めて「ソロではやらないな」ってしまっておいたものを「なんでこれ使わんの?」みたいな。

TAKASE:結構WATTは削ぎ落としてく時あるやんか?歌詞とかビート、アイデアとかも「こういう風に考えてたんだけど、これちょっと違うかなと思って」とか。それがいい時もあんねやろうけど、オレからしたら「いやなんで?そっちの方がむしろええやん」みたいなことは結構あって。「シュッとさせ過ぎたら変やん?」っていうのがオレの中ではあったりするから。

WATT:そういうところが今回は功を奏してるっていうか、実際出してみて「全然いいじゃん」みたいな感触があったから「何を躊躇してたんだろう?」みたいに思えたところが結構ある。それでいうと「お好きにどうぞ」のTAKASEヴァースの「てめえが思う通りやりゃええねん 気にすな/やってみてちゃうなら Do it again」っていうラインが制作の時に背中を押してくれたんだよね(笑)。

TAKASE:なんやねんそれ。その時点では別にWATTに向けて書いてないやんか(笑)。

WATT:でも、これまでだったら自分の中で審議にかけちゃうような、躊躇しそうなところも「やりゃええねん」ってGOサイン出せるような力をもらえたかも。

TAKASE:なるほどな。オレの好きなラインは「ぼちぼちいこか」でWATTの「唯一ノリ方 MCの性/HookもいいがVerse 絶妙なバランス/ルーツ掘り学ぶ 憂鬱より笑う/ルールよりマナー ブームよりカラー」がやばいなと思った。このノリとかフロウとか、韻の固さとか。この曲、リリック交互に書いていってたやんか。出だしちょっとユルめやのに、なんか急にこのパートから固く踏んでくるやん?みたいな(笑)。もちろん韻って文字数だけじゃないねんけど、長い韻ってそりゃムズいやん。韻ってわけわからんくならへん?

WATT:考えすぎるとね。

TAKASE:それでいうと「この夜が続けば」の自分のヴァースで、同じフレーズをずっとやっていく感じ好きやなって思うねんけど。

WATT:あれいいよね。

TAKASE:韻も硬いし「それは」っていうフレーズも何回も使うから、もうLIVEの時に全然覚えられへんくて(笑)。

WATT:「それは…」えっとなんだっけ?みたいな(笑)。

TAKASE:ひょっとして「それは」の後に何を入れても当てはまるんちゃうん?みたいな(笑)。今は結構練習したからいけるけど、ちょっと危なかったな。

WATT:これは構成も含めてすごくいいと思ってて。このヴァースはオレも好きだよ。

TAKASE:誰かをお祝いするような曲をずっと作りたかったんやんか。このヴァースで言ってることやねんけど、誕生日とか。 なんかそういう時めっちゃ嬉しい気持ちになる時あるやん?祝われてる側がなんとも言えへん嬉しい顔してるのとかこっちの方が嬉しい、みたいな。そういう情景がこの歌の一部分にあるなと思ってて。そういう時こそ「この時間ずっと続いてほしいな」みたいになるから。

WATT:お祝い系作りたいってたもんね。

TAKASE:うん。もう1曲ぐらい作りたいもん、お祝いソング。

WATT:お祝いしたい(笑)?そういえばこの曲もゴミ箱にあった曲だよね。

TAKASE:そうやったっけ?あ、そっかそっか。元々ストックにあったもんな。

WATT:言っちゃうけど、実はオレのセカンドアルバム(=2015年リリース「栞」)のジャケットに載ってるんだよね、この歌詞。

TAKASE:そうなん?

WATT:そう、載ってるんですよ。セカンドアルバムを出した後に「もう次作もスタンバってるよ」みたいな意味も込めてリリックを載せてたんだけど。

TAKASE:匂わせや。

WATT:そうなんだけど、 結局その曲はお蔵入りするわけで。それをTAKASEが嗅ぎつけてくれて「オレに祝わせてくれ」とゴミ箱から引っ張り出してくれた、救出してくれた曲なんだよね、これは。

TAKASE:そうなんや、知らんかった。なんかそういう伏線回収みたいなことよくやるよな。

WATT:やろうと思ったんだけど、できなかったね。だから10年近く前のヴァースか。やばくない?(笑)

TAKASE:「栞」やろ?2015年や。

WATT:うん。じゃあ、アルバムに関連する次の質問ね。

お互いにこの曲のこいつのココがすごいとなったリリック・フロウ・アイデアなどありますか?

TAKASE:オレは「Beach Boys」とか「この夜が続けば」とか「それがどうした」とかの、サビのメロディーとかハモリみたいなのがすごいなぁと。ああいうのがあるのとないのと全然曲の雰囲気が変わるし、当たり前やねんけどラップだけじゃできへんから。

WATT:塩梅が難しいよね。歌い過ぎるとちょっと気持ち悪い時もあるじゃん。だから一応バランスは取ってるつもりなんだけど、オレの中では。

TAKASE:うんうん。めっちゃいいと思うな。

WATT:オレはさっきも言ったけど「この夜が続けば」の16小節はすげえいいなと思うよ。違ったら申し訳ないけど、たぶん天然でやってんだよね。「こういう構成にしよう」って考えてやってないでしょ?

TAKASE:そうやな。ほんまは考えてやりたいねんけどな。

WATT:染みついてるんだね。

TAKASE:さっきオレ、歌詞を書く速さを優先してるって言ったやんか?でも終電とかあって書き切るの間に合わへんみたいな時たまにあんねやんか。そういう時はとりあえず同じフレーズ繰り返してたらええんちゃうん?っていうのがあって。その日は「とりあえず埋める」「ゴールする」っていうのが最低限の目標やから。だからそういうやり方でやってみて仕上げる。それで改めて聞いた結果このままでええやんっていうのは結構ある。だから、考えてはできてないけど。

WATT:たしかにそういう構成の曲は、ソロでも結構あるもんね。

TAKASE:せやねん。でもソロやと誰もバランス取ってくれへんから、めっちゃ変な感じになってる時とかある。

WATT:「それがどうした」もまさにそのパターンじゃん。「ああでもない こうでもない~」の部分を2回繰り返して、最後にもう1回で挟んでみたいな。最初はもうひと回し多かったもんね。「これ長くね?」っつって削ったよね。

TAKASE:歌詞自体の長さで言ったらめっちゃ短いもんな。オレの中ではサブフックって感じやから。

WATT:たしかに。じゃあ、次の質問ね。

アルバムの中でこれだけは譲れないと何か我を通した曲はありますか?

TAKASE:オレはないな。ないない。

WATT:オレも基本TAKASEがなんでも許容してくれるから「絶対これがいい」っていう風なことはなかったかな。ただ、ひとつ覚えてるのは「Beach Boys」のフック最後の「さあ踊りだそう」の部分。最初フロウだけ決まってて歌詞を二人で話し合ってたときに、夏だし汗ばむっていう意味合いと、ちょっとアダルトな意味も込めて「さあどう濡らそう」っていうフレーズをオレが提案したら、唯一そこだけはNG出したよね?

TAKASE:そうやな。下(しも)の方に寄りすぎてんちゃう?みたいな。そこだけやな、意見が合わへんかったの。

WATT:オレはこのフレーズがハマった時は「もうこれしかない」と思ってたんだけど、そこだけ立ちはだかったもんね。

TAKASE:そうやな。なんていうんかな…ちょっと恥ずかしかった(笑)。

WATT:あのなんでもありで有名なTAKASEが、あんなに大きくバッテンマーク出すのかと思って(笑)。「え?これはダメなんだ」って思ったのを覚えてる。

TAKASE:たしかに、オレの方が言いそうなのにな(笑)。自分のヴァースでちょっと下(しも)っぽいこともダブルミーニングで言ってんねんけど。そこがギリギリのラインやな。

WATT:「弾けた泡 Beer フランクフルト/よからぬ妄想の末路 結露」の部分でしょ?でもこれさ、文字に起こすとトンチ効いてるなって分かると思うんだけど、普通に聴くとそのまま言ってるよね(笑)?

TAKASE:言っちゃってるよね(笑)。

WATT:だからぜひ歌詞を見てほしいね。すごく上手な言い方してるから。

TAKASE:言葉遊びな。でも夏の歌はちょっと難しかったな。オレの中にやっぱ夏があんまないんやろな。夏キャラじゃないんや。

Beach Boys MV撮影時の一コマ

WATT:お互いにね。今年は増やしていきましょう(笑)。じゃあ、流れでいくつか質問も取り上げたけど、まとめて残りの質問行ってみますか。

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